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「4種類同時抗原検査キット」開発の裏側に迫る!~医療の現場を支える「多項目検査」への挑戦~

「4種類同時抗原検査キット」開発の裏側に迫る!~医療の現場を支える「多項目検査」への挑戦~
カンビー

カンビー

最近はいろんな感染症が同時期に流行することがあって、病院の先生たちも大変みたいだね。

ハカセ

ハカセ

感染症の中には症状が似ているものがあり、症状だけでは原因を特定するのが難しいのデス。

カンビー

カンビー

じゃあ、どの感染症かを調べるために何回も検査をしなくちゃいけないってこと? それは患者さんもツライね……。

ハカセ

ハカセ

そこで注目したいのが、複数の感染症を同時に調べられる「多項目検査」。TOYOBOは2023年、4種類のウイルスを同時に検出できる抗原検査キットを開発・発売しました。発売当時、このような4種類同時抗原検査キットは日本初(※)でした。

※2023年10月時点、当社調べ。新型コロナウイルス、A型/B型インフルエンザウイルスおよびRSウイルスの4つの抗原を同時に検出可能な検査キットとして日本初。

イムノアロー® SARS-CoV-2&FluA/B&RSV
カンビー

カンビー

一度に4種類も!? どうやって開発したんだろう?

ハカセ

ハカセ

今回はその難題に挑んだ敦賀事業所の開発チームと、医療現場との橋渡し役を担った営業チームの皆さんに集まってもらいました。

Index目次

メンバー紹介

川畑(かわはた)さん

川畑(かわはた)さん

東洋紡株式会社 バイオテクノロジー研究所 生化免疫開発部 抗体原料グループ

大学時代は生物化学工学を専攻。2009年入社後、約10年にわたりバイオ医薬品原薬の製造・開発受託に携わり、2019年から免疫診断薬に用いる抗体原料の研究開発に従事。趣味は家庭菜園で、仕事でも家でも「育てる時間」が好き。

柚原(ゆはら)さん

柚原(ゆはら)さん

東洋紡株式会社 バイオテクノロジー研究所 生化免疫開発部 生化免疫検査グループ

大学時代は生命科学を専攻。2015年の入社以来、同研究所(敦賀事業所内)で免疫検査試薬や生化学検査試薬の開発に携わる。山や海が身近にある敦賀で、趣味の山登りやジョギングをエンジョイ中。

渥美(あつみ)さん

渥美(あつみ)さん

東洋紡株式会社 遺伝子試薬・診断薬事業部 診断システムグループ

大学時代は衛生学を専攻。卒業後、製薬会社でDMR(臨床検査薬情報担当者)として約10年間勤務し、2019年に入社。前職から一貫して検査薬の営業に携わる。趣味はドラマや映画鑑賞。連休には家族でキャンプを楽しむことも。

横山(よこやま)さん

横山(よこやま)さん

東洋紡株式会社 遺伝子試薬・診断薬事業部 診断システムグループ

大学時代は原子炉物理・放射線生物学を専攻。インフラ・エネルギー企業で法人営業を経験後、ものを生み出すメーカーの仕事に魅力を感じ、2019年に入社。休日は友人と遊んだり、家族と旅行に出かけたりしてリフレッシュ。

医療現場の課題から生まれた「多項目検査」

カンビー

カンビー

実際の医療現場では、感染症の検査にどんな課題があったんですか?

渥美:課題の一つは、症状だけではどの感染症なのか判断しにくく、複数の検査が必要になることでした。たとえば、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスによる感染症は、いずれも発熱やせきなど似たような症状が現れます。

感染症の抗原検査キットは数多く存在しますが、調べたい感染症やメーカーによって検査の方法も異なります。つまり、原因を特定するためにいくつものキットを使って検査を繰り返す必要がありました。

横山:そうなると、患者さんは検査のたびに検体(鼻やのどから採取した検査用のサンプル)を採取され、医療従事者もその都度対応しなければなりません。特にお子さんの場合、何度も検体を採取されるのは大きな負担です。現場からは、双方の負担軽減につながる「多項目検査」のニーズが高まっていました。

カンビー

カンビー

そういう医療現場の声は、開発チームにも届いていたんですか?

柚原:新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスA型・B型を同時に検出したいといったニーズがあることは、さまざまな方面から聞いていました。ただ、その3種類を同時に検出する抗原検査キットはすでに他社から発売されていたので、同じことをやるのはどうなのか、という話も出ていましたね。

カンビー

カンビー

そもそも「抗原検査」ってどんな仕組みなの?

ハカセ

ハカセ

感染症の原因となるウイルスなどが持つ特徴的な物質が「抗原」。その抗原を見分けて結び付く性質を持つのが「抗体」。

抗原検査は、抗体の性質を利用して、検体の中に特定の抗原があるかどうかを調べる検査デス。

川畑:私はその検査に不可欠な抗体の開発・製造を担当しています。多項目検査の抗体開発には直接関わっていませんが、その前身となる、新型コロナウイルス単独の抗原検査キットで抗体の開発に携わりました。

柚原:川畑さんたちが手がける抗体をはじめ、各チームが開発した原料をもとに、検査キットとしてきちんと機能する試薬を開発するのが私の役割です。

カンビー

カンビー

その試薬を使って、どうやって感染症の原因を調べるんですか?

柚原:感染症の抗原検査では、「イムノクロマト法」という方法がよく用いられます。検体液をキットに滴下すると液が内部を流れ、目的の抗原が含まれていれば抗体と反応して、判定部分に線が現れる仕組みです。特別な測定装置を必要とせず、10〜15分程度の短時間で結果を確認できるので、感染症の迅速な検査に適しているんです。

「イムノアロー®」を用いた抗原検査の様子。検体液を滴下し、判定結果を確認する
ハカセ

ハカセ

ちなみに感染症の検査には、PCR検査などの「遺伝子検査」もあります。TOYOBOは、遺伝子検査から抗原検査まで、感染症の検査を幅広く支える技術を持っているんデスね。

カンビー

カンビー

今回の多項目検査ではイムノクロマト法を採用したんですね。すでに他社から3種類を同時に検出できるキットが発売されていたなかで、その上をいく4種類に挑戦したのはどうして?

柚原:せっかく開発するなら、TOYOBOならではのものにしたいという思いがありました。そこで、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスA型・B型にRSウイルスを加えた4種類を同時に検出できるキットを目指すことになったんです。

カンビー

カンビー

いよいよ開発がスタートしたんですね! 単項目の実績があるなら、技術を応用してサクサク進んだんですか?

柚原・川畑:うーん……(苦笑)。

技術と根気で乗り越えた「4種類同時」の壁

カンビー

カンビー

お二人の反応を見ると、一筋縄にはいかなかったようですね。

川畑:そもそも抗体の開発自体、簡単ではないんです。私が単項目検査キットの抗体を開発した時も、TOYOBOにとってイムノクロマト法は新しい分野で、どんな性能の抗体が適しているのかも分からない状態でした。

共同研究先の富山大学が持つ、抗体のもととなる遺伝子を取得する技術を活用したことで、候補となる抗体を得るまでの時間を大幅に短縮できたものの、そこからがまた大変で……。数百の候補を一つひとつ評価し、検査キットに適した抗体を選抜していく過程で、知識・経験不足によるトラブルが何度もありました。

柚原:当時は、抗体原料を開発するチームと試薬を開発するチームがかなり密にやりとりしていましたね。

バイオテクノロジー研究所内で作業をする柚原さんと川畑さん

川畑:緊急性の高い案件なので毎晩のように集まって、進捗状況や翌日の作業を確認するミーティングを重ねました。原料チームと試薬チームが一体となって開発を進められたことが、製品化までたどり着けた要因の一つだったと思います。

カンビー

カンビー

単項目の開発だけでも、かなりの苦労があったんですね。4種類となると、苦労も4倍!?

柚原:4倍かどうかは分かりませんが(笑)、予想以上に難しかったですね。4種類それぞれをしっかり検出できるよう、どの抗体をどれくらい使うか、他の添加物をどう組み合わせるかといった条件を細かく調整していきました。

一番大変だったのは、判定線を正しい位置に出すこと。今回のキットでは、4種類の判定線に、検査が正しく行われたことを示すコントロールラインを加えた5本の線が表示されます。それぞれを決められた位置に正確に出すことが不可欠でしたが、実際に作ってみるとなかなかうまくいかなくて。

「イムノアロー®」の判定線の表示状態を確認する様子
カンビー

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どうして狙った位置に線が出なかったんですか?

柚原:正しい位置に線を出すには、製造工程でも非常に細かな管理が必要だったんです。製造部門の担当者から「そこまで細かく管理するのは難しい」と言われ、行き詰まったこともありましたが、別の方法を提案するなど粘り強く話し合い、なんとか生産にこぎつけました。

開発に要した期間は3年近く。その間、開発や製造など各現場の担当者が妥協せず、納得できるまで突き詰めた製品になったと思います。

カンビー

カンビー

いくつもの壁を乗り越えて、ついに4種類同時の抗原検査キット「イムノアロー®️ SARS-CoV-2&FluA/B&RSV」(以下、「イムノアロー®」)が完成したんだ!

ハカセ

ハカセ

イムノクロマト法と「矢」を意味するアローを組み合わせたこの名前には、矢のように素早く狙ったものを射抜くイメージが込められているのデス。

カンビー

カンビー

名前も覚えやすいし、何より4種類同時を叶えた画期的な製品だから、営業のお二人も期待が大きかったのでは?

渥美:現場のニーズを反映した製品ですから、もちろん期待しました。とはいえ、イムノクロマト法の検査試薬に関してはTOYOBOは後発なので、お客さまに紹介すると「え、TOYOBOが抗原検査キットを?」という反応もあって。まずは製品を知ってもらうところからのスタートでした。

横山:協業している代理店を通して製品の特徴をアピールしたり、学会や展示会で製品を展示したり、とにかく地道な活動の積み重ねです。Webも活用しながら医療関係者への情報提供を行い、認知度アップに努めました。

展示会で製品の説明をする横山さん
カンビー

カンビー

開発チームに勝るとも劣らぬ根気強さ! 発売後、医療現場からはどんな反響がありましたか?

渥美:やはり、1回の検体採取で4種類を検出できる点は好評でした。一方、実際に使っていただくなかで、一部のお客さまから表示や使い方についてご意見をいただくこともありました。判定線の位置が分かりにくいというご指摘や、検体液を何滴入れたらよいのか分からないといった疑問など、さまざまです。同じ製品でも使う人によって気になる点や受け止め方は違うんですよね。

柚原:そういった現場の声を受けて、すぐに改良できるものもあれば、製造にも関わるので簡単に変えられないものもあり、優先度を考えながら対応していきました。

カンビー

カンビー

製品が完成したら終わり、じゃないんだね。使う人の声を聞きながら、より良い製品にしていくんだ。

医療現場を支える実感を、次の挑戦へ

カンビー

カンビー

「イムノアロー®」が医療現場で役立っていると知ると、うれしいものですか?

横山:営業活動を通じて医療関係者の方々とお話する中で、「採用してよかった」「検査が楽になった」といったお声をいただくことがあり、うれしく感じています。私が子どもの頃は、「まぁ風邪ですかね。薬を飲んで、たくさん寝てください」と言われることもありました。それに比べて今では、検査結果も参考にしながら診療が行われる場面が増えていると感じます。「イムノアロー®」もそうした医療現場を支える存在の一つになっていると感じます。

柚原:製品を採用してくださる施設が増えたり、継続して使っていただいているという話を聞くと、開発してよかったな、世の中の役に立てているんだなと実感しますね。

川畑:私たちが手がける抗体は、製品の中に組み込まれていて直接見えるものではありません。でも、その抗体がないと製品は成り立たない。目立たないけれど、製品の根幹を支えているこの仕事に誇りを持っています。

渥美:コロナ禍をきっかけにPCRや抗原検査という言葉が一般に広く知られるようになりました。その中に自分たちの製品も関わっていると思うと、感慨深いものがありますね。

カンビー

カンビー

コロナ禍といえば、横山さんは感染拡大直前の2019年末に入社したんですよね。

横山:自分でもすごいタイミングで入社してしまったなと(笑)。前職はエネルギー関連の会社だったので、医療の知識も十分でないまま医療現場へ足を運び、要望を聞いて持ち帰ることの繰り返しでした。知識も経験もない分、「とにかく動かなきゃ」という使命感で走り続けていた感じです。

当時は現場も切羽詰まっていて、「話を聞いてくれるだけでも助かる」と言っていただくこともありました。一緒にあの時期を乗り越えたことで距離が縮まり、今でも困りごとを相談してくださる関係が続いています。

渥美:コロナ禍では検査試薬の需要が急増し、供給が追いつかなくなる問題も発生していました。そんな中でもTOYOBOは、供給体制の維持に努めながら計画的に生産を進めていました。もちろん、品質にも妥協しなかった。そういう真面目なモノづくりの姿勢が医療現場からの信頼につながったのだと思います。今では「こんな検査キットをTOYOBOでつくれない?」と相談していただくこともあります。

カンビー

カンビー

医療現場から頼りにされているんだね。開発のお二人にとって、TOYOBOの研究環境の良さって何ですか?

川畑:各分野の専門家がすぐそばにいることですね。専門外で分からないことがあっても、すぐに聞いて確認できる。分野を超えて知識や経験を借りられるのは、とても心強いです。

柚原:一人の研究員が製品開発の最初から最後まで担当する機会が多いところですね。その分、大変な面もありますが、「自分で製品を育てている」という実感が持てますし、自身の成長にもつながっていると思います。

川畑:恵まれた環境を生かして、自分で開発テーマを見つけ、製品として形にすることが目標です。できるだけ外に出て、学会や展示会、顧客訪問などを通してお客さまとお話しする機会を増やし、世の中のニーズをつかんでいきたいですね。

柚原:私も次の開発のヒントになる、新しい情報や技術を積極的に取り入れるよう心がけています。同時に、社内に蓄積された経験やノウハウもしっかり学び、TOYOBOならではの製品を生み出していきたいです。

カンビー

カンビー

次はどんな製品が生まれるのか、期待が膨らみますね。

横山:営業としても、提案できる「カード」が増えていくのはうれしいですね。それがお客さまの求めているものなら、なおさらです。

渥美:医療現場には、まだ製品になっていないニーズがたくさんあります。そこにTOYOBOの技術で応えていく。そんな製品を、これからもみんなで生み出していきます。

カンビー

カンビー

4種類同時の抗原検査キット「イムノアロー®」の開発の裏側には、医療現場のニーズに応えるための、たくさんの工夫と試行錯誤があったんだね。皆さんの話を聞いて、TOYOBOの技術を動かしている粘り強さや誠実さも伝わってきたよ。

ハカセ

ハカセ

開発現場ではすでに新たな挑戦が始まっているようですが、それはまたのお楽しみ。今後の医療分野のモノづくりに注目デスね!

※本記事は、当社の企業活動および研究開発の取り組みをご紹介することを目的としています。掲載内容には当社製品に関する情報が含まれますが、これらは製品の広告・販売促進を目的としたものではありません。また、特定の疾病の診断、治療または予防に関する助言を提供するものではありません。
※本記事の内容および組織名等は取材当時のものです。

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