セイヒンの声
教えて!TOYOBO工業用フィルムのリサイクル
工業用フィルムを開発・製造している敦賀事業所を訪ね、5名の社員にTOYOBOの工業用 フィルムの現状の取り組みと展望について語っていただきました。「2030年にグリーン化 60%」という目標達成のため、「フィルムtoフィルム」に取り組んでいます。


カンビー
TOYOBOには世界一(※1)の強度をもつ繊維があるんだよ。
※1:現存する有機繊維の中での比較データ(TOYOBO調べ。2025年5月時点)

オー太
世界一の強度⁉ 世界チャンピオンってこと?

フーちゃん
そうよ、現存する有機繊維(※2)のなかで強度において世界チャンピオン!
その名も「ザイロン®」。
※2:有機物を主成分とする繊維

ハカセ
理論上最強だった素材をTOYOBOが工業製品として実現させたスーパー繊維なのデス。
今回は強い繊維「ザイロン®」の秘密を探ってみましょう!


吉岡(よしおか)さん
東洋紡エムシー株式会社 環境・ファイバー営業ドメイン 高機能ファイバー営業セクション ザイロン営業グループ ザイロン営業グループ長
1993年4月入社。1998年、ザイロンの事業化と同時に高機能繊維の業務に従事。ザイロンの事業では日本、アジア、欧州市場を担当。ザイロンは、他の材料では成立しない設計や仕様を可能にする特別な繊維であり、その可能性は今後さらに広がると考えている。

江口(えぐち)さん
東洋紡エムシー株式会社 環境・ファイバー営業ドメイン 高機能ファイバー営業セクション ザイロン営業グループ 主幹
1993年4月入社。1998年、ザイロンの事業化と同時に高機能繊維の業務に従事。現在はイザナスも担当。特殊なアイテムに使われることが多いザイロンは採用から実用まで10年以上かかることもあり、諦めないことが大切だという。

久保(くぼ)さん
東洋紡エムシー株式会社 環境・ファイバー営業ドメイン 高機能ファイバー営業セクション ザイロン営業グループ
2024年12月、繊維系商社やメーカーの営業を経て入社。現在、北米を中心としたザイロンの海外営業を担当。北米の市場拡大はもとより、航空宇宙分野における事業拡大も視野に入れて活動中である。

池田(いけだ)さん
東洋紡エムシー株式会社 環境・ファイバー開発ドメイン 機能ファイバー・不織布開発セクション 高機能ファイバー開発グループ
2016年9月入社。現在、繊維の加工開発とザイロンの営業を兼務。総合研究所に席を置き、単に素材を販売するというのではなく、お客さまの課題を解決するための企画力や提案力を高めるよう努めている。



オー太
みなさん、こんにちは。
これが「ザイロン®」ですね。普通の糸と変わらないみたいだけど、本当に世界一の強度があるのですか?
吉岡:オー太くんは引張(ひっぱり)強度というのを知っていますか。物を引っ張ると切れたり壊れたりしますが、その引っ張る力に対して、どこまで耐えられるかという強さのことです。では、糸と鉄を比べると、どちらが強いでしょう?

オー太
もちろん鉄でしょ!
吉岡:ところが、この「ザイロン®」は鉄の約10倍も強いのです。
一般的な鉄の引張強度は約0.5GPa(ギガパスカル)ですが、「ザイロン®」は5.8GPaもあります。

オー太
鉄より強い糸!?
江口:わかりやすくいうと、直径1.5mmの「ザイロン®」で自動車を吊り上げられるのです。理論上の計算ではありますが、920kgの重さでも切れません。
この強度は、いま地球上にある有機繊維の中で最強(※1)です。
※1:現存する有機繊維の中での比較データ(TOYOBO調べ。2025年5月時点)


オー太
すごい、地球イチだ!

フーちゃん
強いだけじゃないのよ、「ザイロン®」はとても燃えにくいの。
池田:「ザイロン®」の分解温度は650°Cです。つまり、鉄が赤くなるほどの高温に耐え、それ以上の温度になっても燃えたり溶けたりせず炭化します。
この耐熱性と難燃性も、現存する有機繊維の中で最高レベルの性能(※3)です。
※3:分解温度650°C、限界酸素指数68



カンビー
どんなところに使われているんですか?

久保:地球を飛び出して、宇宙でも使われています。2001年にNASA(アメリカ航空宇宙局)の宇宙観測用気球の補強材に採用されました。
江口:日本ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)が、“展開型エアロシェル”という大気圏突入用の耐熱シールドに用いて実験を行っています。将来は火星へ行くかもしれません。
池田:探査機が火星の大気圏に突入するとき、そのスピードは音速を超え、数千度の高温にさらされます。そこで、耐熱性・難燃性が極めて高い「ザイロン®」が展開型エアロシェルの素材として注目されているのです。
吉岡:しかも世界一の強度を持ち、繊維ゆえに軽くてしなやか。JAXAが研究開発を進めている展開型エアロシェルは直径約2.5mありますが、普通の布のように折り畳んで収納することができます。

ハカセ
カーボン繊維やガラス繊維も熱に強い性質を持っていますが、コンパクトにはしにくいのデス。

久保:地球上では、防火服や耐熱服などの素材としても使われています。代表的なのが消防士の服。それから、製鉄や溶接といった高温環境下の作業服、防護手袋、産業用ロボットのアームを火花から守るカバーなどもあります。
池田:消防士の服の多くはアラミドという繊維でつくられていますが、「ザイロン®」の650°Cという分解温度はアラミド繊維より100°C以上も高いのです。

江口:まだまだありますよ。たとえば、レーシングスーツやライダースーツ。レースでクラッシュするとクルマやバイクが炎に包まれることもあるし、もし体が投げ出されてアスファルトの上を転がったとしても、「ザイロン®」素材のスーツなら摩擦にだって強いので、レーサーやライダーのリスクを軽減することにつながります。

カンビー
レーシングカーのコックピットにも「ザイロン®」と炭素繊維の複合素材が使われているんだって。「ザイロン®」は熱だけじゃなく衝撃にも強いからね。

オー太
強くて燃えにくいスーパー繊維だ!


フーちゃん
それだけじゃないわ、比弾性率が高いのも「ザイロン®」の大きな特性の一つなの。

ハカセ
比弾性率とは、材料の弾性率を比重で割った数値のことなのだ。比弾性率が高いということは、つまり“軽いのに変形しにくい”ということなのデス。
久保:その特性が評価されて、世界最大の総合楽器メーカーであるヤマハのヘッドホンやスピーカーの振動板に用いられています。どちらもヤマハのハイエンド品です。


池田:比弾性率が高いと音の伝達が速くなります。加えて振動減衰性にも優れるため、文字通り振動が速やかに減衰します。その結果、音同士が共振せず、立ち上がりの良いクリアなサウンドを再現することができます。
江口:要するに、振動板に必要な“軽さ”と“硬さ”を高いレベルで両立しているのが「ザイロン®」という繊維です。

ハカセ
軽さと硬さ。強さとしなやかさ。相反する性能を兼ね備えているということデスネ!
吉岡:私たちに身近なスポーツの分野でも「ザイロン®」糸が活躍しています。たとえば、卓球のラケットやスノーボード。ラケットは内側に、スノーボードは滑走面に「ザイロン®」を織り込んでいるタイプがあります。どちらも衝撃に強く、高い弾性と安定性が得られます。


江口:それから、ロードレース用自転車のチューブレスタイヤやスポーク、パラスポーツ用車いすのホイール、ヨットのロープやセイル、ゴルフクラブ、釣り糸のアシストフック用ラインなど、実用例は他にもたくさんあります。


オー太
本当にいろんなところで活躍しているんですね。一体いつ頃つくられたんですか?
吉岡:TOYOBOが「ザイロン®」の研究開発に着手したのは、いまから35年前の1991年。そして本格的に製造を開始したのが1998年10月。製品として完成するまでにおよそ7年かかりました。
江口:少し専門的な話をすると、「ザイロン®」はPBO(ポリパラフェニレン ベンゾビス オキサゾール)繊維といいます。世界最高強度を持つ有機繊維です。
そのルーツは1980年代、アメリカ空軍の研究所に端を発し、“世界一強い繊維をつくる”という目標のもと、ダウ・ケミカル社という化学メーカーがTOYOBOをパートナーに指名して共同開発がスタートしました。ところが、ダウ社が撤退。その後、当社が単独で研究開発を続け、工業化に成功したというわけです。
池田:当時の最先端科学者たちが生み出した究極の分子構造を、TOYOBOが高度なファイバーテクノロジーで形にしました。当社の技術力がなければ工業化は難しかったでしょう。現在も「ザイロン®」はPBO繊維における世界のトップブランドです。

フーちゃん
「ザイロン®」て、名前も強そうでステキ♡ どんな意味があるんですか?
吉岡:「ザイロン(Zylon)」は、ナイロン(Nylon)やレーヨン(Rayon)など、合成繊維によく使われる語尾の「ylon」とアルファベットの最後の文字「Z」を組み合わせた造語です。つまり、繊維の最終形、この上ない究極の繊維、という意味が込められています。
私は、不可能を可能にする特別な繊維だと思っています。

カンビー
限りない可能性を秘めているということですね!
吉岡:その通りです。といっても、課題がないわけではありません。

カンビー
「ザイロン®」の今後について、みんなの考えや思いを聞いてみましょう。


久保:有機繊維の最高峰に位置する「ザイロン®」ですが、予算やコストの面から、他の有機繊維が主流になっているケースは少なからずあります。しかし、「ザイロン®」でなければならないという用途やニーズは、まだまだ眠っているはずです。それらを開拓することが私たち営業の使命であり、また、やりがいでもあると感じています。
池田:「ザイロン®」という最高の素材をどのような形で生かすのか、そのアプローチは業種や企業によって大きく異なります。たとえば、加工方法を工夫したり、混紡素材として提案するなど、さまざまなお客さまの課題に対するソリューションをいかに創り出せるかが重要です。そこが難しくもあり、楽しくもあるところです。
江口:当社が「ザイロン®」を工業化して今年で28年、私と吉岡さんは最初から関わっています。これまで、さまざまな企業や団体からお問い合わせをいただきましたが、その中で実用化に至ったのは1%に満たないでしょう。たとえ採用に至っても、そこからお客さまの会社の製品として完成するまでに10年以上かかることも珍しくありません。とにかく、諦めないことが大切ですね。
吉岡:実用化された製品が、替えの利かないロングセラーとなっていることも「ザイロン®」ならではのパフォーマンスの一つといえます。
今後の展開については、「ザイロン®」は、たとえばカーボン繊維の性能を補完する“パートナー”としても非常に優秀なため、複合素材としての活用を強化するという方向が一つにはあります。
江口:みなさんご承知の通り、小型化・高密度化が進むエレクトロニクスの分野では近年、部品から発生する熱への対策が重要度を増しています。「ザイロン®」は熱伝導性が高く、熱くなっても変形しにくいという特性もあることから、電子部材への応用が大いに期待できます。
久保:「ザイロン®」が入っている卓球のラケットは“打感”が良いそうです。和弓の弦(つる)にも使われていますが、弦音(つるね)が良いと聞きます。そうした、人間の感覚に訴求するような、数値化できない特性にも「ザイロン®」の可能性が眠っていると思います。
もう一つは、やはり宇宙関連です。世界各国がしのぎを削る宇宙開発に「ザイロン®」が貢献できるよう、私たちも活動していきたいと考えています。
池田:そうした新たな展開から得る、新たなニーズやシーズを起点として、さらに次世代の繊維開発につなげていくことが技術者としての目標ですね。

江口:営業としても、「ザイロン®」のこれまでの28年間は “100打数1安打”に満たなかったかもしれませんが、いまは手応えを感じます。社会の発展や時代の進展とともに「ザイロン®」が必要とされる領域はますます広がっていくでしょう。
吉岡:「ザイロン®」だからできる、「ザイロン®」にしかできない、という世界が増えてきた感がありますね。重要なのは、それを私たちの手で一つひとつ実現していくことです。

オー太
「ザイロン®」は未来を形にするスーパー繊維ですね! ボクも宇宙へ連れていってほしいな。
そうそう、宇宙といえば、映画化もされている『プロジェクト・ヘイル・メアリー』!記憶を失った科学教師が宇宙船で目覚めて、人類滅亡の原因を探る任務だと知り、異星生命との友情と科学で太陽の危機に挑む話なのですが、原作(作者: Andy Weir)には宇宙空間で使用されるロープ材料に「ザイロン®」と記されています。
「ザイロン®」は未来の設計図を描くのに重要な素材になりそうですね。わくわく。
※本記事の内容および組織名等は取材当時のものです。
※1:現存する有機繊維の中での比較データ(TOYOBO調べ、2025年5月時点)
※2:有機物を主成分とする繊維

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